Consciousness






 俺は熱湯仮面。日々悪の巣窟ギボネバと闘う正義のヒーローだ!
 最近は……ちょっと、負け続きだが。
 いや、俺は諦めない! 今日も正義のために闘うのだ!
 
 かちっ。
 

 ぴ〜〜〜〜きゅるきゅるきゅるきゅる……がっ、ががっ。
 かりかりかりかりかりかり。

 
 む、今日は我が愛機、調子が良くないようだな。
 いつもなら2分もすれば戦闘準備に入れるのだが、いつまで経っても…砂時計……。
 

 ぴー。

 
 お……おお。ようやく繋がった。
 良かった、このまま壊れたらどうしようかと…。 
 い、いや! 弱気になっている場合ではない。
 俺は正義の味方なのだ。皆が俺の活躍を心待ちにしている! ここでへこたれるわけにはいかん!
 

 ぽーん。
 

 お。なにやらメールが届いているぞ。
 なになに…。ふむ、内容は真っ白だな。
 おお、ヒーローたる俺への贈り物か、なにやらカッコイイ名前の添付ファイルがついているではないか!
 さっそく開けてみよう……。
 
 
 ………ぐはっ!!
 
 
 し、しまった、敵の罠か!
 またも必殺技を返された…くそう、ギボネバめ!
 
 
 
 いや、これしきでへこたれる俺ではない!
 さっそく反撃……。
 …む?
 なにやらもう一通メールが届いているぞ。
 
 今度は慎重に対応せねば…。
 
 

 


 

 
 珍しく、夕方に少しだけ時間が開いた。
 メールチェックをしていると、ふとメールボックスにあるキンタの名前が目にとまる。
 そう言えばこの間のメールに、なんか変なことが書いてあったような…。
 なんだかネット何とかっていう変なのが……あ、これか。熱湯仮面。
 ふーん。恥ずかしい名前だなあ。
 とにかくそいつがあちこちにウィルスメールをばらまいてるらしいけど…。
 キンタの所にもそのメールが来ていたとかで、あまりの内容の痛さに笑った、って書いてある。
 そう言えば僕のところには来たことないなあ。
 大した興味があるわけじゃないけど、暇つぶし程度に調べてみた。
 
 ……関わり合いたくない一般人、って感じみたいだな。
 コーヒー飲みながら、更にあちこち見て回る。
 
 ……。
 ふーん。相手にしなきゃ大丈夫みたいだけど。キンタのところも一度きりみたいだし。
 添付ファイルさえ開かなければ大丈夫、ねえ。
 …名前が非凡なだけで、あとは平凡なんだな。
 思いながらパソコンを落とそうとして、ふとキンタの紹介で知り合ったしっかりもののお人好しを思い出す。
 そう言えばKYOって、ちゃんとその辺気をつけてるのかな。

 何となく仏心も手伝って、ツールを立ち上げてみる。
 KYOはいない。…午後だし、しょうがないかな。
 とりあえず気をつけるように、オフラインでメッセージだけ投げておく。
 僕がKYOと会う随分前からちょこちょこ現れてるみたいだし、KYOのパソコンも特にウィルスとかかかってなさそうだし…大丈夫だとは思うけど。

 まあ、怪しいファイルを確認もせずに開けるような奴じゃないとは思うんだけど。
 まして文面がひどいからなあ…。

 思いながらツールを落としたところで、別口からデータが届いた。
 さ、仕事仕事。









「おお!! メル友たちからではないか!!」

 思わず声に出してしまったが、それも仕方ないと言うものだろう。
 俺の親愛なるメル友たちからの激励メールなのだから!
 
 そう! 俺の力の源は、メル友たちからの励ましなのだ!
 ギボネバの反撃などに落ちこんでいる場合ではない!!
 俺は熱湯仮面、正義の味方なのだ!!

 さあ! 今日も元気にギボネバに闘いを挑みに行くぞ!

 …その前に、まずは必殺技の開発からだな…。
 メル友の一人に、新しい必殺技のアイデアがないか聞いてみよう…。









 仕事が一段落ついて、ふっと時計を見たら朝の4時だった。
 肩を鳴らしながら、1時間ぐらい仮眠を取ろうと思ってマウスに手を伸ばして、ふと思い立つ。
 そういえば、この間KYOにオフラインメッセージ投げたんだっけ。
 ツールを立ち上げてももちろんKYOは居なかったけど、代わりにオフラインメッセージが返ってきていた。
 

 KYO
  −忠告ありがとう。気をつけるよ。
 

 …微妙な返事だなあ…。
 KYOって変なのに好かれやすいから、もしかして面識あるのかな?
 
 もう一度メッセージを送ろうと思って、やめた。
 もうすぐ大きい仕事入るし、KYOも自分の事ぐらい自分でやるだろうし。
 どうせ放っといても害はそんなにないしね。
 思いながら、マウスを操作してツールを落として、電源を切る。
 愉快犯が増殖しなきゃいいけど。

 こんなのでボロだしたりしないでよね、KYO。










 な…なにぃ!!
 メル友の皆に協力してもらった超必殺技までも効かないとは!

 ここはやはり、ギボネバの本拠地か!
 今まで闘いを挑んだやつらには全く手応えが無かったからな。
 やはり敵の本拠地はこうでなくては!! やるぞ俺! 負けるな俺!!

 くくく、これが最後だと侮っているな、ギボネバ。
 もう俺の相手などする必要はないなどと、何たる欺瞞!!
 切り札は最後まで取っておくものだ。
 これで終わりだ! 行くぞ、最終手段っ!!

 ギボネバもこれで終わりだ! ふははははは!!









 ……。
 もしかしてこのメールボックスに来てる奴、あの例のへんな仮面マスク…じゃなかったなんだっけ。
 …ああ、そうそう熱湯仮面、じゃないのかな?
 久々に仕事を終えたご褒美がこれか…まったく。
 とりあえずKYOに戻ったと伝えるメールを送っといて、また少し考える。
 放っといても害は無い、無いけど……。
 こういうメールが僕のところまで届くってのが気に入らない。
 別にウィルスメールは珍しくもないけど、それがこいつって言うのが…この暑いのに更に暑苦しくって嫌だし。

 以前にキンタが面白がって送ってきたメールを開いてみる。
 ……僕に来てるのとはちょっと違うみたいだな。大体文面は同じみたいだけど。
 ふーん…。










 く、くそぅ…最終兵器までも返されてしまった…。
 ヒーローは常に逆境に立たされているのが常とはいえ、いいかげん…ヘコむなぁ…。
 い、いや! メル友の皆が応援してくれている間は負けるわけにはいかん!!
 い…いかん、いかんのだ! いかんったらいかん!

 …おや?
 他にも変なメールが届いてるぞ、なんだこれは。

 

親愛なる熱湯仮面様

ご活動お疲れ様です。
いつも、熱湯仮面様の活躍に心躍らせています。

よろしければ一度、チャットでお会いできませんでしょうか。
私達二人だけしか入れないように、パスワードを設定してありますので
ご安心下さい。


 お…おおお! め、メル友以外からメールが届いたぞ!
 しかも俺の隠密活動を知っているとは…!

 指定された時間は…じゅ、十分後ではないか!
 あわててメールに書いてあったアドレスに飛ぶ。
 ど…どんな人かな…。









<熱湯仮面 様が入室されました>

 熱湯仮面:こ、こんにちは…。

 熱湯仮面:……。

 熱湯仮面:ま、まだ誰も居ないのか…。

<真・熱湯仮面 様が入室されました>

 熱湯仮面:し、真・熱湯仮面!?

 真・熱湯仮面:ふはははは! ひっかかったな偽者め!

 熱湯仮面:だっ、誰だお前は!

 真・熱湯仮面:ファンメールごときでのこのこ呼び出されるとは間抜けな奴だ!
 
 真・熱湯仮面:こんな奴が俺の名前をかたっているとは、情けなくて笑えてくるわ! ふはははは!

 熱湯仮面:ひ、人を偽者呼ばわりとは…俺が正真正銘熱湯仮面だ!

 真・熱湯仮面:何を言う偽者め! 俺こそが本物の熱湯仮面に決まっている!

 熱湯仮面:ならば、俺が戦っている悪の組織の名前は何だ!

 真・熱湯仮面;俺が戦っているのだ! ギボネバに決まっているだろう!!

 熱湯仮面:くっ、やるな…。では俺の力の源は何だ!

 真・熱湯仮面:だから俺だといっているだろう! メル友の皆が俺にパワーをくれるのだ!

 熱湯仮面:く…ま、またしても…。

 真・熱湯仮面:大体お前は弱すぎる! 今まで何度ギボネバに返り討ちに合っているかわかっているのか!

 熱湯仮面:うう…。

 真・熱湯仮面:そんな奴に熱湯仮面の名前を名乗る資格はないっ!

 熱湯仮面:くっ! し、しかし俺こそが熱湯仮面だ! お前に資格とか言われたくないわ!

 真・熱湯仮面:俺が言おうと言うまいと、失敗ばかりのお前をメル友の皆が認めると思うのか!

 熱湯仮面:くぅうっ!! で、では対決だ!

 真・熱湯仮面:対決だと?

 熱湯仮面:お前が真の熱湯仮面だと言うなら、俺より優れているはず!
 
 熱湯仮面:対決して勝った方が真の熱湯仮面ということでどうだ!?

 真・熱湯仮面:……わかった。

 真・熱湯仮面:では1ヶ月後、俺はお前の名前で、メル友の皆にウィルスをばら撒く!

 熱湯仮面:な、なにぃっ!?

 真・熱湯仮面:それを防ぎ、見事俺を倒したら、お前を真の熱湯仮面と認めてやろう!

 熱湯仮面:ま、まてっ!!

 真・熱湯仮面:では、さらばだ!!

<真・熱湯仮面 様が退室されました>











 な…な……な、なんだあいつはっ!!
 お、俺の偽者…?
 しかもメル友の皆にウィルスをばらまくだとっ!?

 くそっ…ど、どうすれば良いんだ!?
 一体誰が俺の偽者など…。


 ……。

 ……はっ! そうか! これはギボネバの罠なのだな!?
 俺の注意を偽者へ逸らし、攻撃の手を緩めようとする計略なのだろう!

 よぅし…乗ってやろうじゃないか!
 偽者め、勝負だ!!

 …ええと、まずはギボネバに挑戦状を送りつけてっと…。










 さて…仕込みは終わったっと。
 チャットツールを落としながら、手に入れたIPと奴の情報をエディタに書き写していく。

 ログを消す前に、ふとそのログをもう一度眺める。
 ……。


 …悪乗りしすぎたかな。


 こういうのに一生懸命にはなりたくないけど、なる奴の気持ちもわからなくはないなあ…。
 …なりたくはないけど。

 さて、まずは…と。










…ぴろんっ。



SAKU
 −KYO、いる?
KYO
 −あ、SAKUおはよう。
SAKU
 −大団円おめでとう。歓迎の嵐はそろそろ落ちついたかい?
KYO
 −まあね。色々手伝ってくれたおかげだよ、ありがとう。
SAKU
 −いやいや。僕も乗りかかった船を降りるのは趣味じゃないんでね。
SAKU
 −あ、そうそう。…ねえKYO、あれから熱湯仮面に会った?
KYO
 −えっ?
SAKU
 −姿を消したみたいだけどさ。実は僕のところにも一度きてたんだよね。
KYO
 −そうなんだ。そういえば最近、メール来ないなあ…。
SAKU
 −やっぱり捕まってたんだ。
KYO
 −あっ。
SAKU
 −正直だなあ、君は。
KYO
 −…嘘がつけないみたいなんだ。
SAKU
 −キンタから聞いてるよ。変なのに好かれやすいっていうのも。
KYO
 −…あいつは…。
SAKU
 −とにかく、ほどほどにね。
KYO
 −気をつけるよ。ありがとう。
SAKU
 −いやいや、じゃあまた。




…ぴろんっ。











 く……。
 くっそぉぉぉおっ!
 ギボネバめ! 姑息な罠をしかけよって!!

 何日たってもネットに繋がらないではないか!!




 何度再起動しても繋がらないし、設定はなんだか店の人にやってもらったからどうやればいいか分からないし…。
 ネットに繋がらないから、メル友の皆に相談も出来ん。
 
 
 くそっ、偽者め! 謀ったな!!  




 見てろ……いつか、いつか……。

 光インターネットを繋いでお前らを倒してやるからなあぁっ!!








「ちょっと! いるんでしょ!? 電気代滞納してるのいい加減払ってくださいよ!! −−−さんってば!!」













――――End.

 
半周年リクエスト企画で、「熱湯仮面 VS SAKU」とのリクエストを受けて書いたものです。
…熱湯仮面を書いてるうちになんだか可愛くなってきたことはナイショです。


以下、掲載時コメントです〜。


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お、
オチなかった……。
 


この作品を作るにあたり、「遠羽ふぁんすぽっと」のふぃーるど様に、SAKU及び熱湯仮面の資料を提供していただきました。
本当に詳しい資料をありがとうございました! おかげで無事、完成にこぎつけることが出来ました。

……しかし出来あがったのがこんなのでゴメンナサイ…(涙)。

 

…これ、VSになってます…? あわわわ。
 
SAKUって通常だったら絶対、熱湯仮面レベルの相手なんて鼻にもかけないと思うんですよ。
だから余計な語りが増える増える…。

本編の裏でSAKUと熱湯仮面は何をしていたのか!?(おいおい)

……一応、本編に忠実に作りました。そんな必要無いんですけどね……(笑) 。 
 
まあ、言わずと知れた圧勝な訳ですが。
あ。SAKUが仕掛けたのは「ダイヤルアップ先を勝手に変更する」やつです。
(すげーしょぼくてゴメンナサイ…なので本編中には出しませんでした…)
アダルトサイトなんかで変な場所をクリックするとたまにやられます。ダイヤルQ2とかに繋がったり(爆笑)。
こういうしょぼい仕掛けするような人ではないと思うんですが。相手がしょぼいので(笑) 。
それと私に丸っきり知識がな…(終了) 。

…いや、友人がかかったことあるの思い出して(爆笑)。
 

熱湯仮面貧乏説は捏造です。ダイヤルアップ回線なのも私の都合です(笑)。一応資料は集めまくったのですが、もし漏れてたらごめんなさい!!


新しい小説形態にチャレンジしてみました。撃沈な感じです。