世界で一番やさしい嘘        −Teppei Shiraishi −





こんな感情はいらんもんや
そう言い聞かせてずっと今まで過ごしてきた
 

悔しいんやないし 腹立つんでもない
憎いんともちゃう
こんだけ時間が経ってもまだ 純粋にただ許せへんだけや
 


見えんとこについた傷はそう簡単に治るもんやないけど
隠し通すことはきっと出来るて思う
 
夏が来るたび絶対思い出すけど そんでもそれはオレのやから
大切だったっちゅう証やから
 


なあ 恭ちゃん
 


オレのこんな感情も恭ちゃんは全部受け止めてまうから
あいつの憎たらしい笑顔とか思い出しながら
救えんかったと思っとるあの子のこと思い出しながら
知らんうちにまた自分からは見えんところに傷増やすやろから
 

せやから絶対オレは口にださへんよ
 

とっくに見抜かれとるかもしれへんけど
この感情だけは オレは墓場までもってくで







――――End.

 
許す許さないと、受けとめることとは違う。
哲平はきっと一生許さないだろうけど、そのことを言葉には出さない。
それはガマンとは違うんですよ。
大切な「恭ちゃん」を守るためだから、自分の感情はそこから切り離す。
 
作中で哲平が許せないと言っているのは、涼雪です。
 
前にも一度語ったことがあるんですが、哲平の「許せないけれど受け入れる相手」。
威への怒りへとすりかえてるけれど、どうしても許せない相手。

亮太の命を奪った、それが最大の事実ですから。