■顔を上げる





 奈々子の声につられて、東の空を見る。

 さっきまで赤く染まっていた山際から、赤いというよりは白い光が溢れ出した。
 目を細めてもその眩しさには耐えきれなくて、でも目を離すことも出来なくて…俺達はしばらく、その光を追う。
 ゆっくりと昇る日はだんだん丸くなってきて、太陽を直接「丸く」見れるっていうことに俺は驚いていた。
 だって…白い下敷きとか間に挟んでその形を見たりしたことはあったけど、こんな風に光を発している丸い太陽って、見れないよな。日中は。
 日の出自体は初日の出じゃなくても見れるけど…。
 こうやって、年に一回しかない年の初めに、日の出を見るのも…気持ちがリセットされるようで、いいかもしれない。


「きれーだねー」
 奈々子がそう呟いて、少しだけ身体を乗り出すようにする。
 それ以外に言葉が見つからない俺は、ただ一言頷いて、ゆっくりと上がる太陽を見つめる。


 年の変わり目はただの節目だと思ってたけど…。
 こんな風に迎える朝なら、年に一度の特別でもいいかもしれない。



「今年一年、ええ年でありますよーに」
「よーにっ!」


 手を叩いて哲平の言葉に、奈々子が続ける。京香さんも笑って頷いて。成美さんもちょっとだけ口の端が上がってる。
 所長は黙って煙草を吹かしてて、俺と目が合って初めて、少しだけ笑った。



 今年一年、皆にとっていい年でありますように。



 そう願って、俺は手を合わせてゆっくりと目を閉じた。













――――Next.

 
はい、おつかれさまでしたー。変則正月短編小説でした。
こんなことしてるから遅れるんだよ私…遅刻してしまって大変申し訳ありません。

基本的に「成美ルート」が正ルートなんですが(爆笑)どのルートも楽しく書けました。こういう「シナリオ風」のノリは楽しいですね。ゲームとかのシナリオを書いてみたいなあと思ったりしますが、きっと力量が追いつかない…。MPのあの分岐の多さとか見てると、特に。
ああいう「フラグ管理」を考えるのが死ぬほど苦手なんですよね…基本的に一本道ルートが好きなので。

えっと話がそれました。正月短編ですよね。
以下、各ルートバレ解説になってます。一つしか読んでない方はそのシナリオの感想のみお読み下さい。


■京香&奈々子
奈々子がちょっと自己主張弱かったですが、個人的には京香さんとの会話がメインなので(すみません)。京香さん相手には何となく強いイメージのある恭ちゃん…何故……。どうも、京香さんが真神くんを「弟のように頼っている」せいかも知れません。成美さんとは違った意味の姉かな、うん。

■哲平&誠司
趣味全開です(爆笑)。所長と諏訪さんの関係は、哲平と恭介の未来の一つでもあるわけで。もちろんそんな風にならないとは思いますが、そうならない二人で有るためにはどうしたらいいか、考えてほしいなあと思って。…考える必要も無かったようですが…。

■成美
私には実は弟がいまして、しかも成美さんほどじゃないですが結構こき使ってます(笑)。なので、成美さんの気持ち、判るとまでは言わないんですが被るところがあるんですよね…。理想を繁栄しているだけかも知れませんが。
なので今回こういう形にまとめました。どうかな?
姉は弟がいなくなるのは寂しいんですが、でも一人立ちしてほしいんですよ。うん。



さて、解説も書き終えたところで…。
遅くなりましたが改めて、あけましておめでとうございます。
拙いサイトではありますが、どうか本年も宜しくお願い致します。